くも膜下出血
脳の表面は薄いクモ膜でおおわれていますが、この膜と脳との間に隙間があり無色透明の液体(脳脊髄液)で満たされています。ある程度以上のおおきさの血管はこの隙間にあるため、脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの異常血管が破綻して出血をおこすとクモ膜下出血になります。 1年間で人口10万人に対し10~20人が脳動脈瘤破裂によりくも膜下出血を発症するといわれています。発症時の典型的な症状は突然始まる今まで経験したこととない頭痛です。 一回目の出血で3割以上の人がそのまま命を落としてしまうといわれています。幸い一回目の出血で命を失わずにすんだ人でも、いったん止まった出血が再出血を来して状態を非常に悪化させます。 この再出血を防ぐために、発症早期に破裂脳動脈瘤や動静脈奇形への外科的治療が必要になります。また、出血後数日から2週間ほどの間に、遅発性脳血管攣縮と呼ばれる現象があり、これも状態を悪化させます。クモ膜下出血をきたした患者さんは、発症した時点で重症であればあるほどその後の回復も悪く、死亡率も高くなってしまいます。 診断はまずCTやMRIで行います。出血がわずかな時は頭部CT検査で出血が明らかでないことがあります。その際は腰椎穿刺を行いクモ膜下出血の有無を確認する必要があります。これは腰から注射針を刺して脳脊髄液を採取し、出血の有無を調べる方法です。診断がはっきりしたら、出血源を明らかにするための脳血管検査(血管造影、CT血管造影、MRA)を行います。 再出血を予防する方法として、 1.開頭手術による脳動脈瘤クリッピングや脳動静脈奇形摘出 2.血管内治療による塞栓術 があります。治療法の選択は重症度や異常血管の形状や場所によって決定されます。再破裂予防が終わると、その後は遅発性脳血管攣縮や正常圧水頭症と呼ばれる病態に対する治療が必要になる事があります。