未破裂脳動脈瘤
脳動脈瘤が破裂して、くも膜下出血が起きてしまうと、2/3の人は重篤な障害を残したり、亡くなってしまいます。 一方、未破裂のままだとほとんどの人は全くの無症状です。ここ20年のMRIの普及で脳動脈瘤が未破裂の状態で見つかることが多くなってきました。成人の約4~6%位が脳動脈瘤を有することがわかっています。現在、未破裂脳動脈瘤のどれくらいが破れてくも膜下出血を来すのかという明かなデータがありませんが、年間1%程度の確率と考えられています。また一方では優れた脳神経外科施設で破裂前に予防的治療をうけても手術による合併症で障害を来たした例が報告されています。従って未破裂脳動脈瘤を外科治療すべきかどうかははっきりした答えは現時点では出ておらず、調査が継続中です。現時点での治療決定の基準、脳卒中ガイドライン2009からの抜粋を下記に示します。
未破裂脳動脈瘤が発見された場合、年齢・健康状態などの患者の背景因子、大きさや部位・形状など病変の特徴、未破裂脳動脈瘤の自然歴、および施設や術者の治療成績を勘案して、治療の適応を検討することが推奨される。なお、治療の適否や方針は十分なインフォームドコンセントを経て決定されることを推奨する。 未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)から考察すれば、原則として患者の余命が10~15年以上ある場合に、下記の病変について治療を検討することが推奨される。
①大きさ5~7mm 以上の未破裂脳動脈瘤 ②5mm 未満であっても、 症候性の脳動脈瘤 後方循環、前交通動脈、および内頸動脈─後交通動脈部などの部位に存在する脳動脈瘤 Dome neck aspect 比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴をもつ脳動脈瘤 開頭手術や血管内治療などの外科的治療を行わず経過観察する場合は、喫煙・大量の飲酒を避け、高血圧を治療する。経過観察する場合は半年から約1年毎の画像による経過観察を行うことが推奨される。 血管内治療においては、治療後も不完全閉塞や再発などについて経過を観察することが推奨される。 開頭クリッピングの術後においても、長期間経過を追うことが推奨される。