パーキンソン病
中脳の黒質にあるドーパミン作動性細胞が障害されておこる病気で、手足がふるえる(振戦)、筋肉かこわばる(筋強剛)、動きが鈍い(動作緩慢)、体のバランスが悪い(姿勢異常)を主な症状とする病気です。1000人に1人程度の有病率で、年齢が上がると病気が起きる率も上がります。50~70歳代の発症が一般的です。パーキンソン病の9割の人は遺伝性はなく、1割の人が遺伝性のある家族性パーキンソン病です。 |
症状
- 運動症状
安静時に手足がふるえる(振戦)、筋肉かこわばり、かたい(筋強剛)、自発的な動きが鈍い(動作緩慢)、体のバランスが悪く、左右に傾いたり、腰や頚の前傾がおきる(姿勢異常)、歩幅が狭くすり足、手の振りがなく、方向転換が難しい(歩行障害)があります。 その他、声が小さくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったり、表情がなくなったり、書字が下手になったりなどの症状もあります。
- 非運動症状
- 自律神経障害:血圧の急な変動、発汗の異常で体温調節の不良、便秘、夜の頻尿、尿漏れ、勃起障害などがあります。
- 精神、認知機能障害:うつ症状の合併は比較的多く見られます。パーキンソン病の発症後長期間経過すると注意力や精神症状に波のある痴呆症も起きてきます。記憶力は比較的保たれますが、ムシなどが見える幻視や、いない人の声が聞こえる幻聴があることが多いようです。
- 睡眠障害:不眠だけでなく、レム睡眠障害を合併することがあります。睡眠にはレム睡眠期と非レム睡眠期があり、人が夢を見るのはレム睡眠期です。通常レム睡眠期には手足の筋肉は弛緩し動かなくなるのが正常ですが、レム睡眠障害では手足の緊張が保たれているため、夢に連動して手足を動かしてしまいます。このため寝ているときに、横に寝ているパートーナーにけがをさせたり、自分がけがをしたりしてしまいます。
- 感覚障害:パーキンソン病の運動症状が出る前に、においの異常が先行することがあります。その他、関節の痛み、筋肉の痛み、手足のしびれ、痛みを伴うことがあります。
診断
基本的には臨床診断といって、症状から診断します。補助診断として、MIBG心筋シンチグラフィー(心臓へのMIBGの集積をみる)、PET(ドーパミンやドーパミンレセプターの分布を見る)、PETよりやや簡便で同様の検査ができるSPECTをもちいます。他の原因でパーキンソン病同様の症状が出ていないか確認するために、脳脊髄のCT、MRI検査や向精神薬などの薬剤の服用の有無のチェックが必要です。
治療
薬物療法が治療の中心です。たくさんの種類があり、それぞれ特徴があり、作用の仕方が異なります。代表的なものを列挙します。
- ドパミン補充:エルドパ
- ドパミン受容体作動薬:プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ
- ドパミン放出を刺激:アマンタジン
- 放出されたドパミン分解を抑制:MAO-B阻害剤 セレギリン
- 放出されたドパミン分解を抑制:COMT 阻害剤 エンタカポン
- アセチルコリンを抑制:トリヘキシフェジル
- ドパミン合成促進:ゾニサミド
- ノウリアスト
通常、上記の薬の組み合わせで治療を行っていきますが、最初の治療の中心は1.ドパミン補充と、2.ドパミン受容体作動薬の組み合せです。 必要量で治療すれば症状はわからないほどになり、それまでとかわらない生活を続けられることが可能です。 しかし、5~10年経過すると、薬の血中濃度の変動に伴い症状が悪化するウエアリングオフ減少や、手足や肩などがくねるように動くジスキネジアなどの問題が起きることがあります。これを予防、改善するために上記のその他の薬や新薬が開発されてきています。 次にこれらのパーキンソン治療薬にみられる一般的な副作用は吐き気、食欲不振、眠気、便秘、起立性低血圧、足のむくみ、幻覚などがあります。特に2.ドパミン受容体作動薬は、突然の睡眠発作がおこることがあるため、これを飲んでいる人は車の運転はしないように勧告されています。その他、2.ドパミン受容体作動薬には病的賭博や病的性欲亢進を起こすことがあるので注意が必要です。 外科治療は薬が効きにくくなったり、副作用が強い場合に選択されます。方法は脳深部刺激法といい、直径1mm程度の細い電線を入れて弱い電流をながすことで症状を改善する方法です。